職員倫理綱領
はじめに
社会福祉基礎構造改革は、新しい福祉の理念を「障害を持つ個人が尊厳を持って、その人らしい自立した生活が送れるよう支える」と掲げています。それを受け、施設福祉は平成12年には介護保険制度、平成15年には支援費制度、平成18年には障害者自立支援法の施行など、「利用者中心のサービス」のため措置制度から利用者本人との契約制度に変わりました。
これまで施設を利用してきた障害者や高齢者について、集団生活、運営管理面などから、必ずしも人権が守られてきたとは言えません。国連においても本年中には障害者の権利条約が正式に採択されることが合意されるなど、人権擁護の思想が大きなうねりとなって広がっています。
社会福祉法人厚生協会は、人権尊重の基本理念を遵守するのは勿論、施設独自にその意思を明確にしていかなければならない責務があると考えます。私たち職員は、施設を利用している一人ひとりの尊厳を守り、利用者の自立と自己実現を目指し、利用者主体の福祉サービスを提供すると共に豊かな人生を実現できるように支援していくため、「職員倫理綱領」と「職員行動規範」を明文化し、その基本的姿勢を明らかにするものです。
職員倫理綱領
第1条 個人の尊厳
私たち職員は、利用者一人ひとりの人格を尊重し、経験や個性を大切にし、安心と誇りをもって暮らせるよう支援します。
第2条 自己選択・自己決定の尊重
私たち職員は、利用者中心のサービスに努め、利用者が自ら選択、決定したことを尊重し実現できるように支援します。そのための情報を積極的に提供し、十分な説明と同意を得ることに努めます。
第3条 プライバシーの保護
私たち職員は、利用者一人ひとりのプライバシーを守り、秘密保持、私的空間と時間の確保に配慮します。
第4条 財産権の尊重
私たち職員は、利用者の年金、貯蓄等の財産を守り、それらの権利が侵されることなく、本人の希望する生活に支出されるよう支援します。
第5条 地域社会との関係
私たち職員は、地域社会の一員としての自覚を持ち、地域に積極的に参加するように努め、利用者が地域社会の中で市民として豊かに暮らせるよう支援します。
第6条 職員の専門性
私たち職員は、自らの専門的役割と使命を自覚し、日々研鑚、研修に努めます。
第7条 サービスの点検
私たち職員は、提供しているサービスが適正かどうかを常に自己点検し、改善に努めます。また苦情や第三者の評価に対し誠意をもって対処します。
第8条 家族との関係
私たち職員は、利用者の支援方針について家族と協議し、家族と職員の相互理解のもとで支援していけるよう努めます。また、家族の人権、プライバシーの保護に配慮します。
職員行動規範
【個人の尊厳】
1. 体罰、暴力はもちろん、暴言、威圧、無視などの態度はとりません。
2. 利用者の呼称は、“さん”付けをします。職員が利用者から“先生”と呼ばれた場合は、名前で呼んでもらえるように説明します。
3. 利用者一人ひとりが、安心や自信、誇りを持って暮らせるよう、励ましや配慮ある言葉掛けをします。
4. 利用者からの要望や訴えがあった場合は、すぐ対応するよう努めます。すぐ応じられない場合は、その理由と、いつまで待てばよいか等具体的に説明します。
【自己選択・自己決定の尊重】
5. 施設サービスの利用に関しては、十分な説明をし、同意を得ます。
6. 利用者個人の生活背景等を理解し、その意思や希望を尊重し、実現できるよう支援します。
7. 日常生活に関わる日課、外出、行事、通院、服薬等の情報は分りやすく提供します。
8. 利用者の自主的活動を積極的に支援します。
【プライバシー保護】
9. 個人の情報には守秘義務を守り、記録の管理に配慮します。また他利用者の居るところでは利用者個人に関わる話はしません。
10. 居室に入るとき、日常生活動作の介助、私物の確認、施設見学者の案内等の場合は必ず利用者の了解をとります。
【財産権の尊重】
11. 利用者の預かり金や所持品の管理は事故のないように努めます。
12. 預かり金は利用者の意思に沿って使われるように努めます。
13. 施設内での利用者の所持品の廃棄には、利用者の承諾を得ます。
【地域社会との関係】
14. 地域の一員として、地域の方への挨拶や、地域行事への参加を心がけ、地域との関わりを深めます。
15. 利用者が、社会の一員として生活できるよう様々な社会参加を積極的に進めていきます。
16. 公的サービスやその他の社会資源の利用に関する情報を提供し、利用者が活用していくことを支援します。
17. 利用者が、地域で理解を得て協力してもらえるよう、地域との調整などに努めます。
【職員の専門性】
18. 支援者としての自覚を持ち、研修や自己啓発を通して、その資質の向上に努めます。
19. それぞれの相互点検や協力を通して、組織の一員としての自覚を持ち、チームワークの向上に努めます。
20. 関係機関、団体などと連携し地域福祉の向上に努めます。
21. 職員の好みや価値観を押し付けず、利用者の意思や考えを大切にします。
【サービスの点検】
22. サービスの効果や効率について常に点検し、その改善、向上に努めます。
23. 利用者への対応が不適切、又倫理綱領及び行動規範に違反するような場合は、相互に指摘し合い是正していきます。
24. 第三者の評価を受け、サービスの点検に役立てます。
【家族との関係】
25. 家族と相互理解のもとで利用者主体の支援に努めます。
26. 家族との情報交換を心掛け、より良い利用者支援及び家族支援を目指します。
【その他】
27. 職員として、対人援助にふさわしい言動、身だしなみに心掛けます。
28. 職員に落ち度がある場合は速やかに謝り、改善します。
29. 職員の私的な都合や利益のために利用者を利用することがないようにします。
30. 職務中は、職員同士で集まり、雑談をするなど仕事以外の行動はとりません。
平成18年9月26日制定